平井汲哉

2月に入って立春を迎えましたが、まだまだ寒い日が続いています。

けれど、天気の良い日は陽射しに春の気配を感じることもあります、そんな風にゆっくりと暖かさはやってくるのでしょうね。

 

2月6日より京都店にて、「夢工房コレクション展」が開催されています。

そのコレクションの1つである平井汲哉(1879-1938)の作品をご紹介します。

 

蝸牛筆架

 

筆架とは、墨のついた筆を置いておく台のことです。

墨を使って文字を書く機会の少なくなった今では、取り立てて必要のない道具なのかもしれませんが、私自身、書を習っていることもあり筆を置いておく道具は必要だと感じます。

私の使う筆架はプラスチック製の味気のないもので、筆を置く、という動作のためだけにあるものです。そこに思い入れや喜びといったものはありません。

 

 

けれど、この蝸牛筆架はどうでしょう。

 

木彫りの作品ですが、葉っぱの上にいるかたつむりは、生き生きとしてまるで今ここにいるような景色です。繊細で軽い葉っぱは、少しの力で壊れてしまいそうで、その扱いにも細心の注意が必要です。かたつむりの殻や触覚は、本物と見間違えてしまうほど精巧に作られています。

実際のかたつむりや葉っぱを丁寧に観察し、道具として役に立つようデザインし、そして思い描いた通りに彫っていく。

簡単ではないことは容易に想像がつくでしょう。

 

汲哉の素晴らしい作品は、いつまでも飽きずに見ていられます。

こんな道具が、手元にある喜び。

ものを書くという日常の中にある瞬間を、いかに楽しく満たされた感覚で過ごすか。

こういうことに、手間と暇を惜しまず作品を生み出す汲哉の素晴らしさがここにあります。

 

今回の夢工房コレクション展では、彼の作品をいくつか展示しています。

私はこの素敵な道具を多くの方にご覧いただきたいです。

ぜひ足を運んでみて下さい。